鳥羽水族館が採集したイソギンチャクが
「世界の注目すべき海洋生物の新種トップ10(2022年)」に選ばれました

2023年03月28日(火)
スタイロバテス・カルシファー

 鳥羽水族館が定期的に行っている熊野灘漸深海帯の生物調査で採集したヒメキンカライソギンチャクStylobates calcifer(スタイロバテス・カルシファー)が、国際的な海洋生物のデータベースであるWoRMS(World Register of Marine Species(国際海洋生物種目録))からTen remarkable new marine species from 2022(世界の注目すべき海洋生物の新種トップ10(2022年))に選出されました。3月19日は「分類学者に感謝する日」とされており、それを記念して、WoRMSでは毎年、「注目すべき海洋生物の新種トップ10」が選出されます。

 ヒメキンカライソギンチャクは鳥羽水族館が定期的に行っている熊野灘漸深海帯の生物調査で採集されたもので、古くからその存在は知られているものの、分類学的記載が行われていない未記載種であることが判明したため、東京大学の𠮷川晟弘(よしかわあきひろ)特任研究員(30歳)らとの共同研究で、新種のイソギンチャクとして論文で報告し、2022年4月にアメリカの学術誌Biological Bulletin に掲載されました。

 本種は特定の1種のヤドカリと共生するだけでなく、ヤドカリが棲む巻貝の上に付着し、その”宿”を増築するという極めて珍しい生態を持つことから、生態学的に見て非常に興味深い種類であると言えます。いわば“ヤドカリの城”を作るその姿になぞらえて、本種はスタジオジブリの映画「ハウルの動く城」の原作となった小説「Howl’s Moving Castle(日本語タイトル: 魔法使いハウルと火の悪魔)」に登場する火の悪魔「カルシファー」に因んで命名されました。

 なお、鳥羽水族館が採集に関わった生物としては、2019年にもタコヤドリゴカイSpathochaeta octopodis が「世界の注目すべき海洋生物の新種トップ10」に選出されており、今回の選出は2回目になります。

 

 飼育担当者は「今後も研究者と連携して熊野灘に生息する生物の生態を明らかにし、水族館を訪れる多くの方に知ってもらいたい」と話しています。

ヒメキンカライソギンチャクはKコーナー「へんな生きもの研究所」でご覧いただけます。

【ヒメキンカライソギンチャク(Stylobates calcifer:スタイロバテス・カルシファー)】

大きさ:高さ1~2 cm 幅(直径):3~4 cm
分布域:房総半島から紀伊半島にかけての水深約100~400mの深海底
特徴:特定の1種のヤドカリ:ジンゴロウヤドカリと共生関係を築いています。また宿主ヤドカリが貝殻の引っ越しをする際には、ヒメキンカライソギンチャクを新しい貝殻へと持ち運ぶ行動も確認されているため、両者は非常に強い共生関係にあると予想されます。

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